北海道の日高と十勝を分ける日高山脈の日高側の南端に位置する様似町。まちのシンボルでもあるアポイ岳は、特殊な岩石で形成された地質でおおわれており、固有の高山植物が咲くなど貴重な自然が残されています。
太平洋から見た「アポイ岳」と町並み
そこで町では、学術的に貴重な地質遺産や自然・文化遺産の保全と活用をはかるユネスコプログラムである「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されるよう申請していましたが2015年(平成27年)9月に「アポイ岳ジオパーク」の名で認定されました。
様似町では、ジオパークの認定を弾みにしてまちおこしに繋げようと、一般町民に貴重な資源を理解してもらうとともに、ガイドの育成など”奇岩と高山植物が物語る”「アポイ岳ジオパーク」を観光客に楽しんでもらう取り組みを進めています。
■魅力
アポイ岳ジオパークのエリアは、様似町全体ですが、その最大の魅力は何といっても「アポイ岳」でしょう。
アポイ岳は、約1300万年前に2つの大陸プレートが衝突して北海道の原型がつくられた際に、地下数十キロにあるマントルから押し上げられた特殊な岩石「かんらん岩」でできた山です。
この岩石は、植物が育ちにくい性質を持っているため、それに適応して固有の高山植物が生育していると考えられています。
様似町のジオパークを語るには、「アポイ岳」と「海岸線」に注目してみていくとその面白さがわかってきます。
「アポイ岳」(9合目)から見た海岸線
▼魅力その1・・・「アポイ岳」
アポイ岳は、標高810m。登山道は5合目までは、アカエゾマツやゴヨウマツなどの針葉樹が優先する森が続きますが、5合目からは高い木がなくなり、代わりにゴツゴツとした「かんらん岩」の岩場が断続的に続き、途中には行く手を阻まんとするような大きな岩場もあります。
登山道にはごつごつした「かんらん岩」
森林浴や珍しい高山植物の花々、高感度のあるパノラマ、岩場の登りなど変化にとんだ登山がエンジョーイできます。
花の咲く岩場を上る登山者
登山道沿いにあるお花畑では、この岩場に順応できる花が咲きます。
●「サマニユキワリ」
5月初旬、アポイ岳に「春がきました!」と知らせてくれる、雪解けの岩場に咲くサクラソウ科の花。ピンクの可憐な花を咲かせます。
春を知らせる「サマニユキワリ」
●「ヒダカソウ」
5月から6月にかけて、直径2センチほどの白い花を咲かせます。アポイ岳にしか咲かない固有種。アポイ岳を代表するキンポウゲ科の花で、数も少なく、絶滅危惧種・国の「特定国内希少野生動植物種」に指定されています。
アポイ岳代表「ヒダカソウ」
●「そのほか・・・注目!」
珍しいのは、岩場や植物だけではありません。
① アポイ岳でしか見られない蝶・「ヒメチャマダラセセリ」。
アポイアズマギクにとまった「ヒメチャマダラセセリ」
② 固有種のカタツムリ「アポイマイマイ」。
③ 氷河期からの生き残りの「エゾナキウサギ」。
上記の様に、珍しい蝶などが見られるということで、ヒョッとしたら、山歩きの途中で出会うかもしれません。魅力たっぷりのアポイ岳です。
アポイ岳西方の様似町市街地の海岸線はとても特徴的です。大小の奇岩がつくる風光明媚な景観は私たちに感動を与えてくれます。
海岸線に並ぶ奇岩
様似町が一望できる「エンルム岬」
「エンルム岬」の断崖
海岸線を彩る奇岩は、その時の気象の変化や時間、天気の良しあしによって、様々な姿を見せてくれます。奇岩の一つ、「親子岩」は海水浴場の沖に浮かぶ3つの岩です。夕日がとてもきれいですが天気によって、様々な姿を見せてくれます。
穏やかな「親子岩」の夕日
雲の多い日の夕日・・・
風が穏やかで、冬の冷え込んだ朝に発生しやすく、白く海面から立ち上る「霧」を「けあらし」といいます。様似町でもこうした現象が見られた時の写真です。
「けあらし」で裾が見えなくなった「親子岩」
様似の海岸では、人々との生活に欠かせないコンブ漁も盛んです。「日高昆布」のブランド名で販売されています。7月から10月までの間が昆布漁期です。
昆布干しの風景
日高昆布の特徴は、煮えやすいうえ、味もよいなど用途が幅広く「万能型昆布」として重宝されているということです。
▼魅力その3・・・「アポイ岳に感謝するイベント!」
様似町で一番多くの人が参加するイベントが”アポイ岳の頂でかがり火をたいたという伝説”にちなんだとして行われる「アポイの火まつり」です。毎年8月第一土日に開催されます。アポイ岳の麓で採火式を行い、イベントの2日間御神火の燃え盛る中で、様々なイベントが行われ、多くの人々が集まって祭りを盛り上げます。
盛大に「アポイの火まつり」
■画像の提供・取材協力
*アポイ岳ジオパーク事務局(町役場内)・・・0146-36-2120
*ジオパークのHPは「こちら」