■クッチャロ湖
北海道北部・浜頓別町(はまとんべつ・ちょう)の湖に、毎年春と秋に定期便のようにやってきて、ドラマを繰り広げるのが渡り鳥のコハクチョウです。その舞台となる湖が「クッチャロ湖」です。
コハクチョウのドラマの舞台
湖はコハクチョウの中継地といわれ、長旅のために体力を回復するための休憩地であり、一部のコハクチョウの越冬地ともなっています。
■魅力
クッチャロ湖にやってくるこのコハクチョウたち魅力をドラマの様にしてお伝えしましょう。
▼第一幕「家族が増え、秋の賑わい!」
秋、10月初旬、「コーウォ、コーウォ」という鳴き声が湖の上空で聞こえてきます。ドラマのはじまりです。コハクチョウたちが繁殖を終えて子どもたちを連れて北から(ロシア極東地域・北極に最も近い北辺)から戻って来たのです。
長旅をして湖に戻って来た白鳥
長旅をして湖にやってきたのです。秋は、直接本州方面に向かう仲間も多く、湖にやってくるコハクチョウの数は、例年11月の初めに、一日として最高でも2000羽ほどです。大人と変わりないくらいの大きさの体の色が灰色をした幼鳥の姿がところどころで観察できるのがこの時期の見どころです。
灰色をしたのが子どものハクチョウ
▼第二幕「厳寒の越冬」
北から湖に戻ってきた白鳥たちのうち、その多くは本州方面に渡っていきますが毎年400羽前後がそのまま湖に残り越冬します。
湖の結氷は湖岸から・・・(11月)
白鳥たちのドラマの第二幕は、湖の水面が凍って狭められていく厳しい冬をどのようにして乗り切るか、試練の時です。水面が閉ざされると、少し離れた川に移動し、また湖に戻ってくるといった具合に、場所を移動して過ごします。
地吹雪も体を寄せ合って厳しさしのぐ
冬はエサ不足になるうえ、どんな危険が待ち構えているかわかりません。2月はエサ不足のシーズン。キタキツネは、弱った白鳥がいないか、襲うチャンスをうかがいますがいかんせん”水”は大の苦手。白鳥たちは距離を開けて危機を回避!
2月はエサ不足 キツネにも気を使います
▼第三幕「恋の季節」
湖の氷が徐々にとけだし、厳しい冬を乗り切った白鳥たちがホッとする3月。
暖かくなり水面が開いていきます(3月)
本州方面に移動していた白鳥たちが戻り始め、特に4月中旬から5月上旬にかけては、一日で最高6000羽を超し、湖はごった返します。
夕暮れの湖と白鳥たち
第三幕は白鳥たちの「恋の季節」です。新しいパートナーができますと、愛を確かめ合うため“くちばしを合わせる”「ハッピーリング」が見られます。愛の確かめは、早いものでは1月の下旬から、北へ飛び立つぎりぎりまで続きます。
素晴らしいカップルの誕生です!
はじめのうちはぎこちないペアも、見事なハッピーリングをつくっていきます。
▼第四幕「繁殖への旅立ち」
5月の上旬、繁殖のため北へ向かうぎりぎりまで、白鳥たちは、恋の相手を求めあいます。そして各グループごとに湖を離れ、編隊(長い列になって)を作って、ロシア極東地域への長旅に向かって飛んでいきます。
湖の上空を飛ぶ白鳥
6000羽の白鳥たちは、5月の中旬までには、そのほとんどが飛び立っていき、クッチャロ湖は白鳥が戻ってくる秋まで静寂なシーズンに入ります。
▼そのほか・・・
白鳥たちが飛び立った後、6月に入りますと、湖から、少し離れたオホーツク海に面したところにある「ベニヤ原生
花園」が脚光を浴びます。自然の花畑に草花が咲き出します。ここでは夏の終わりまで、センダイハギ、ハマナスやエゾスカシユリなど約100種の草花が観察でます。
ベニヤ原生花園
■画像の提供・取材協力
*TEL:0163-42-2534
*観察館のハクチョウ飛来数の情報は「こちら」