■「よさこい祭り」 (高知県高知市) | |
「よさこい祭り」は、毎年8月に行われる四国三大祭りのひとつで、はじまってから半世紀を超え、2013年で開幕60年の節目を迎えます。「よさこい祭り」は地域の経済に活力をもたらす原動力として大きな効果をもたらしているばかりでなく、地域の人々をはじめ全国の人々を巻き込んで熱狂させ、楽しませる”地域づくり”の祭りとして大きく貢献しています。 「Oh! 元気 ねっと」では、この祭りが高知の文化遺産として、長く存続していくためには、「よさこい祭り」の基本になっている”よさこい鳴子踊り”の「踊り」と「衣装」が重要なファクターになると見ていまして、今後の変化に注目をしています。 |
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「よさこい祭り」の概要 | |
「よさこい鳴子踊り」 |
▽はじめに |
「よさこい祭り」は毎年8月9日から4日間の日程で、発祥の地・高知を舞台に全国から200チーム、踊り子2万人近くが参加して「よさこい鳴子踊り」のリズムに乗って街中を踊り歩き、チームの演舞のバランスの良さなどその出来栄えを競う、夏の南国高知を熱く燃え上がらせるお祭りです。各チームは”よさこい鳴子踊り”のリズムを発する音響装置を備えた「地方車(じかたしゃ)」を先頭に、そろいの衣装を身につけ、リズムに合わせて、手に持った鳴子を打ちならし、威勢の良い掛け声をあげ、躍動感ある”よさこい鳴子踊り”を懸命に踊りこみます。 |
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▽目的 | |
「よさこい祭り」は、全国的な不況の中、戦後の荒廃した市民生活が落ち着きを見せ始めた昭和29年8月(1954年)、不況を吹き飛ばし、市民の健康と繁栄を祈願、合わせて夏枯れの商店街の活性化を促すために、高知商工会議所が中心となって発足させたものです。そして愛媛県出身で、高知在住の作曲家・武政 英策氏(たけまさ・えいさく)に”よさこい鳴子踊り”の作曲を依頼、これに地元の日本舞踊の各流派の代表らによって振り付けが行われ、「よさこい祭り」スタートしました。 |
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▽沿革 | |
第1回目となった昭和29年は、参加チーム21、踊り子750人でスタート。その後、祭りは、さまざまな困難も乗り越えて拡大を続け、30回目には、踊り子が1万人を突破、祭りに「前夜祭」、「後夜祭」、それに1999年(平成11年)からは「よさこい全国大会」も開催されるようになって、さらに盛り上がりを見せ、2012年(59回)の祭りでは、約200チーム、踊り子2万人近くが参加するなど、膨れ上がりました。 |
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「よさこい祭り」の波及効果は・・・? | |
こうした「よさこい祭り」の実施によって、地元高知では、経済的な波及効果が出ているほか、この祭りが日本の多くの地域に普及する効果をもたらすなど2つの波及効果がでています。 |
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「よさこい祭り」に多くの人々 |
▽経済効果 |
経済効果を平成24年(2012年)の第59回で見てみますと、この年は、197チーム、踊り子18,000人が参加する大規模な祭りとなり、祭り全体で11億2,300万円の資金が投じられ、その経済波及効果は85億4,600万円で、7,61倍の事業効果をあげていると、高知商工会議所では試算しています。こうした効果からも、「よさこい祭り」は高知県として最も重要な観光資源であるとともに、南国土佐を象徴する祭りとしての位置を占めるに至ったとされています。 |
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▽普及効果 | |
土佐の高知で生まれ、半世紀を超えて受け継がれてきた「よさこい祭り」は高知県から全国へと普及し、今では、200か所以上の地に広がっているといわれています。各地域のまつりのイベントとして組込まれたり、あるいは学校の運動会でも行われています。また札幌では、「よさこい祭り」とは、違った組織形態で、平成4年(1992年)に「YOSAKOIソーラン祭り」という名の”踊り”を主体にとした形で開催され、全国各地に普及しています。 |
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「よさこい祭り」の魅力は・・・? | |
「よさこい祭り」は、このように大きな効果をもたらしていることが証明されましたが、この祭りの魅力は何なのか?それはひとことで言いますと演舞する踊り子と見物する人の一体感にあります。それを引き出しているのが「よさこい祭り」の伝統を守る「ルール」であり、”よさこい鳴子踊り”を演出する5つの必須の要素、”5点セット”です。 |
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「鳴子」 |
▲魅力①「ルール」 |
「よさこい祭り」の「ルール」は以下の4点です。 ①1チーム当たりの参加人数は150人以下。 ②鳴子(なるこ)を持って前進する振り付け。 ③曲のアレンジは自由だがよさこい鳴子踊りのメロディーを入れる。 ④地方車(じかたしゃ=音響を出す装置を積んだ車)はチーム1台。 |
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▲魅力②「5点セット」 | |
5点セットとは以下の通りです。 ①「衣装」・・・チームカラーを表すのが衣装。快適性や踊りやすさなどを考慮しつつ個性的なデザインで魅力を創出、観客へアピール。 ②「踊り」・・・踊り子群の一糸乱れぬバランスがポイント。チームのスケール、パワー、汗・息づかいが観客を魅了する。 ③「音楽」・・・”よさこい鳴子踊り”に乗ったリズムは、「踊り・衣装」を表現させる踊り子へのプレゼント。 ④「地方車」・・・チームの先頭を走るシンボル的存在。チームの第一 印象を発信!観客をひきつけられるかカギを握る? ⑤「鳴子」・・・「よさこい祭り」の必需品。「鳴子振り・音」と「衣装・踊り」 のハーモニーがチームのアップにつながる。 |
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「ルール」を満たし、5点セットを整えた万全の態勢の各チームは、順に前進を始めます。そこで待ちうけているのは、街中に設けられている、合わせて17の競演場と演舞場です。 | |
▲「魅せます!競演場・演舞場」 | |
17の競演場や演舞場のうち、追手筋本部の競演場では、2500席の桟敷席が設けられ、地方車から発するよさこいのリズムに乗ってそろいの衣装で着飾り、鳴子を打ちならした各チームの踊り子は、「頑張れ! 頑張れ!」の観客から応援を受け、全身を使って体を動かし汗を飛び散らせて熱演。会場は、熱気と興奮に包まれる魅力的シーンを展開・・・真夏の灼熱の中で・・・一層燃え上がり、踊り子と観客が一体となり・・・双方とも満ち足りた気持ちに酔いしれるシーンを魅せます。 | |
「よさこい祭り」の運営 | |
「よさこい祭り」を支え、盛り上げているのが運営に当たっている高知市内の3つの団体で、3つの団体は、仕事 の分野をそれぞれ分けて、まつりがスムーズに進められるよう連携して運営に当たっています。 ☆3つの団体・・・ ① 「よさこい祭り振興会」(高知商工会議所)・・・よさこい祭り全体の管理。 ② 「㈱高知市観光協会」・・・花火大会・全国大会。 ③ 「よさこい祭り競演場連合会」・・・競演場・演舞場が加盟する組織・・・運営など検討。 |
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「よさこい祭り振興会」担当 武石 憲一さん(たけいし けんいち) 高知商工会議所 地域振興課 課長補佐 |
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「よさこい祭り」は、半世紀以上もの間、規模の拡大が続いてきましたが、解決して行かなければならない課題も少なくありません。今後の「祭りのあり方」や「祭りの運営」といった2つのポイントで課題があります。 | |
▲課題①「祭りのあり方」 | |
「祭のあり方」については、「ルール」が決まっています。当面重要なのは、「踊るチームを集めること」、それと「チームのレベルをアップすること」の2点です。祭りは見に来た人に楽しんでもらうためにやっていますので、チームの数が多いこと、上手なチームを育てることが重要です。今後、チームなどと話し合って行く必要があります。 |
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▲課題②「祭りの運営」 | |
年々規模の拡大によって、経費の増加による運営資金の不足、車の増加による渋滞や駐車場の確保、前線で働く運営スタッフの確保、それに地域の人たちとのコミュニケーションによるまつりへの理解など諸課題が山積しています。それに関係者の高齢化という課題も 出はじめています。60回目の節目を迎える2013年は、諸課題について、関係機関と協議し、解決して行かなければならないと思っています。 |
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「Oh! 元気 ねっと」の注目点 | |
「よさこい祭り」を続けていくにはさまざまな課題をクリアして行かなければならないことが分かりましたが、この祭りの原点は、みんなが楽しめる祭り、地域づくりの祭りです。従って、この祭りが長く、しかも進化しながら続けられていくためには、”よさこい鳴子踊り”の5つの要素・5点セットがしっかりとクリアできていなければなりません。5点セットのうち、音楽・地方車・鳴子ついては、はっきりとルールが決められています。 「音楽」はさまざまなリズムが取り入れられるようになっています。 「地方車」は装飾のあり方の工夫次第です。 「鳴子」はテクニックを身につければ対応できます。また鳴子は、いずれ”夜を意識”して、LEDなどを使ったカラフルな光を放つものも登場し、祭りに華やかな彩りを添えることになるかもしれません。 一方で、「踊り」や衣装」についてはルールがなく、自由な発想でやってゆけば良いということになっており、何らかの歯止めをかけなければ”よさこい本来の良さ”は存在しなくなるという危惧があります。「Oh! 元気 ねっと」では「踊り」・「衣装」が祭りの生命線と考え、今後の動向に注目しています。 |
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「よさこい鳴子踊り」 |
注目点①「よさこい祭り」の”踊り” |
当初、”よさこい鳴子踊り”は、現在の「正調」と呼ばれる日本舞踊の振り付けを引き継いだ盆踊りのスタイルでスタートを切りました。 その後、楽曲の自由選択が許され、今ではサンバ、ロックなど各チームが個性を重視した楽曲や振り付けを披露するようになってきました。このため、楽しみが増した半面、振り付けの複雑さ、激しい動きをするものも増えてきて、”踊りのコンテスト”のような色彩が出始め、本来の地域のみんなが参加して楽しめる祭りの原点を逸脱しかねない危惧が出てきています。 ”地域づくり”の祭りとして、誰もが楽しく楽しく踊りに参加できる形へ持って行けないものか、今後の動向が注目されるところです。 |
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「坂本龍馬も眺める”高知ブルー”」 |
注目点②「よさこい祭り」の”衣装” |
各チームがそろいのカラフルな衣装を着て、一糸乱れもなく踊る姿は、多くの人々を魅了します。その衣装は、祭りの華です。デザイナーは、チームの個性を最大限にアピールでき、一方で、踊り子にとって快適で踊りやすい衣装にしようと、生地選びからカラフルで華やかさのあるデザインを追及します。しかし、出場チームにとって、これに要する経費の負担は少なくありません。この祭りは”衣装のコンテスト”ではありません。祭りは、誰もが楽しめるものと考え、「品格・品質」を保てるならば、お金をかけなくてもよい方法がないのか、もっと簡素にして良いのではないかという模索も必要です。 「衣装」の一部として、南国・高知を象徴するカラーを出すことも可能かと思います。坂本龍馬も眺めている高知の海の”ブルー”、熱く燃える高知市民の”レッド”など、カラーを「ルール」のひとつとして取り入れてゆくことができれば、高知らしさを強調することが出来ます。 さらにチョッと飛躍しますが日本各地では、その地域の伝統の織物がいろいろデザインされ、新しいファッションとして発展する傾向を見せています。こうした織物を使ったデザインの衣装を「よさこい祭り」に登場させることが出来ますと、その幅がぐっと広がり、人々を楽しませる新たな魅力となるかも知れません。 いずれにしても、高知の人々の懐の深さが試される点として、注目していきたいと思います。 |
問い合わせ |
よさこい祭り振興会 (高知商工会議所内) 〒780-0870 高知県高知市本町1丁目6-24 TEL:088-875-1178 |